世界のミックススパイス
ミックススパイスの歴史は、古代メソポタミアでワインの風味付けにスパイスが使われた数千年前に遡ります。気候風土や食文化に応じて、インドのガラムマサラや北アフリカのラス・エル・ハヌートなど、地域ごとの独自のブレンドが生まれ、保存や薬効の目的でも発展しました。
ヒンディー語で「熱い(ガラム)スパイスの混合物(マサラ)」を意味する。アーユルヴェーダ(伝統医学)の思想に基づき、代謝を上げ、体を温める目的で配合される。一般に辛みよりも「香り」を重視し、調理の仕上げに加えられる。
中国の陰陽五行思想(万物は木・火・土・金・水の5つの要素からなる)に由来する。5種類に限定されず、「複数の香りが調和していること」を重視する。肉や魚の生臭みを消し、独特の甘くエキゾチックな香りを与える。
アラビア語で「店の頭(トップ)」を意味し、スパイス商が自店の名誉をかけて最高級の素材をブレンドしたことに由来する。地域や店によって10種類から数十種類のスパイスが配合され、マグレブ地域(北アフリカ西域)のタジン鍋料理などに不可欠である。
スパイス(種実や皮など)ではなく、ハーブ(葉)を主体とした伝統的なミックス。南仏の乾燥した気候で育つ野生のハーブを乾燥させてブレンドしたもので、1970年代に規格化され世界へ普及した。肉や魚のロースト、煮込み料理に使用される。
主な構成スパイス
タイム(またはオレガノ)、炒りごま、SUMAC(スマック)、塩地中海東部沿岸(レバント)の食文化を象徴する。ウルシ科の植物の実を乾燥させて粉末にした「スマック」の独特の酸味と、ご香ばしさが特徴。オリーブオイルと混ぜてパン(マナキッシュ)に塗って焼くのが伝統的な食べ方である。
カリブ海に浮かぶジャマイカの伝統的な辛口調味料。大航海時代以降に西アフリカから連れてこられた奴隷(マルーン)たちが、山中に逃亡した際に野生のイノシシ肉を保存・調理するために考案したとされる。ジャマイカ特産のオールスパイスがベースとなる。
エチオピア料理(特に「ワット」と呼ばれる煮込み料理)の味を決定づける非常に辛いミックススパイス。アフリカの角(東アフリカ)の交易路を通じて流入したスパイスと、現地の固有種が融合して生まれた。
インドのストリートフード(チャットと呼ばれるスナック類)や果物に振りかけるスパイス。ブラックソルト特有の硫黄臭と、アンチュールの強い酸味が特徴で、独特の「旨酸っぱさ」を付与する。
もともとはスペインの肉の保存・漬け込み技術(アドボ)がルーツ。大航海時代に中南米やフィリピンに伝播し、現地で独自のドライスパイスミックスとして定着した(※フィリピンでは液体調味料の形式が多い)。
セネガルの伝統的なコーヒー「カフェ・トゥバ」の風味付けなどに使われるミックススパイス。独特のペッパー感と、ウッディな柑橘系の香りが特徴。もともとは薬効を期待して調合されていた。
フランス語で「4つのスパイス」を意味する伝統的なブレンド。中世ヨーロッパの料理法に起源を持ち、パテ、テリーヌ、ソーセージなどの肉加工品(シャルキュトリ)や、長期保存する煮込み料理の臭み消しに古くから用いられてきた。
江戸時代(1625年)、江戸の薬種商(からしや徳右衛門)が漢方薬の知恵を元に「生薬(しょうやく)を食事に取り入れる」という目的で考案したとされる。地域(東京、京都、長野)の老舗ごとに配合が異なる。
ベンガル語で「5つのスパイス(パンチ・フォロン)」を意味する。ホール(粒)のまま均等に配合されているのが特徴で、パウダーにせず、調理の最初に油で炒めて香りを移す「タルカ(テンパリング)」に使用される。
北アフリカ発祥でその後中東地域に広まり根付き、アラブの商人たちの交易ルートを通じて欧米に広まった、ヘーゼルナッツやカシューナッツなどナッツ類と、クミンやコリアンダーなどのスパイス、塩を混ぜ合わせて焙煎し粗く砕いたミックススパイス、シーズニングソルト。 「つき砕く」という意味を持つアラビア語「dukkah」に由来し、ザクザクとした食感で焙煎による香ばしい風味が特徴。 中東地域ではデュカを手作りするのが一般的であるため、国や地域、家庭ごとに使う材料やスパイスが異なりそれそれ家庭の味があり、保存が利くため、作り置きされている。 オリーブオイルにデュカを混ぜ合わせて、パンにつけて食べるのが定番だが、幅広い食べ方で親しまれている。サラダや炒め物、ケバブなどの肉料理、魚のソテー、パスタ、スイーツにも使える、振りかけるだけで、エスニックな風味とアクセントをプラスできる万能調味料。