徹尾徹頭スパイス雑記
映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』
「スパイスの一粒一粒の中には、記憶がある」
——映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』は、インドとフランス、二つの食文化の衝突と融合を描いたヒューマンドラマです。
ストーリー(※ネタばれを含みます)
インドの伝統的なスパイス。その物理的なスパイスだけでなく、人生における困難やつらい出来事の比喩としてのスパイスが重要なテーマ。
フランスの田舎町が舞台で、インド料理とフレンチレストランが向かい合うという設定。ストーリーはシンプル。南フランスのどこかの町に、インドから逃げてきた一家が料理屋をオープンするもその場所が問題。
目の前の道を隔てて、ミシュラン一つ星のフレンチレストラン。その女主人…。
インド料理の派手な香りが、フレンチレストランに流れ込んでくる。客が減る。でかい音楽が夜中に流れてくる。
もう、徹底的に対立。市場で食材を取り合ったり、営業妨害すれすれのことをしたり。
「匂い」と「音」と「味」で描かれる「対立する二つの世界」、バターの香りとクミンの香りが激突。
印象に残るのはオムレツのシーン。オムレツが、一番難しい料理だそう。
主人公の天才シェフ・ハッサン。大切にしているのはインドの母親から受け継いだスパイスブレンド。
劇中のセリフ、
「スパイスの一粒一粒の中には、記憶がある」。
彼にとってスパイスは、失った故郷の記憶を呼び戻すための唯一の方法。
マダム・マロリーの心が動くきっかけになるのが、ハッサンが作ったオムレツ。
フランス料理の基本中の基本であるオムレツに、彼はチリパウダーとコリアンダーを混ぜる、ほんの少しの工夫。
一口食べたマダムの表情が変わる。
その後、パリに行ったハッサンは、有名な料理人に。トリュフに繊細なソース…、スタイリッシュなモダン・フレンチの世界。
そんなある夜、誰かが持ってきた、ただのインドカレーを食べた瞬間、彼の表情が変わる。
主人公ハッサンが作る「スパイス風味のオムレツ」や「スパイス・ブッフ・ブルギニヨン」
「スパイス風味のオムレツ」
フランス料理の伝統的なオムレツに、スパイス(チリなど)を加えた一品。保守的なマダム・マロリーの心を動かし、両国の文化の架け橋となる。
「スパイス・ブッフ・ブルギニヨン(ブルゴーニュ風牛肉の赤ワイン煮込み)」
フランスの伝統的な煮込み料理を、インドのスパイスでアレンジ。この独創的な創作料理が、若きシェフであるハッサンの才能を証明。
「カルダモン香るクレーム・ブリュレ」
伝統的なフランスのデザートに、インドの代表的なスパイスであるカルダモンをプラスした一品。単なる甘さだけでなく、異国文化を感じさせるスパイシーで魅惑的な風味で、マダム・マロリーをはじめとする審査員たちを唸らせる。
その他、シナモン、サフラン、クローブ、ナツメグといったスパイスを効かせた、タルトや焼き菓子などの伝統的なフランス菓子。
故郷の母の味である「魔法のスパイス」 の記憶がフランス料理の技法と見事に調和した、二つの文化の融合を通じ、互いの心を解きほぐしていく軌跡を描いたヒューマンドラマ。